現役の探偵さんにお話を伺う連載、【現役探偵に聞いてみた!】
第3回は、聞き込み特化の女探偵!探偵NiCOさんにお話を伺いました。ホムズトークの記事を何度も監修していただいているので、ご存知の方も多いかもしれません。
いつもお世話になってます!

今回は、NiCOさんが探偵になったきっかけや、探偵としてのこれまでの歩みや苦悩・喜びなど余すことなくお伺いしました。
よろしくお願いします!
目次
プロフィール:探偵NiCO

探偵NiCO
・元日本最大手の探偵社所属の現役女探偵
・現在は独立して、個人探偵として活躍中
・尾行をしない珍しいタイプの探偵さん
・人探しや結婚調査を中心に活動中
「人探し 名前だけ」でのGoogle検索で、監修させていただいた@fox_wtsn さんの人探しの記事が1位になりました!!
— 探偵NiCO (@NICO22673601) May 13, 2021
すごいです!それだけ名前だけで人探しをしたい人が多いのかな?とも思いました。
これからもよろしくお願い致します。 pic.twitter.com/jrTluMk4UE
探偵になろうと思ったきっかけ
現在聞き込み特化の探偵として、関東を中心に活動されているNiCOさん。
では、なぜ探偵になろうと思ったのでしょうか?

警官に憧れた幼少期

私は元々、警察官になりたいと思っていたんです。
私は昔から正義感の強いタイプで、電車で痴漢を見かけたら捕まえに行くような子どもだったんですが、「警察になりたい!」と強く思ったのは、過去私がある女性の警察官に救われたことがあったからでした。
高校生くらいの時、家に帰る道で襲われて。その時はなんとか自分で撃退したんですが、本当に怖い体験でした。
逃げていった犯人を探してもらうために警察を呼んだんですが、その時来てくれた女性の警察官に本当によくしてもらったんです。

その時、「私もいつか警察官になって人を助けたい」と思うようになりました。
それで、専門学校に通って警察になるための勉強を始めたんです。でも、結局警察にはなれなかったんですよね。
そこで、警察になるのはなんとなく、諦めてしまいました。
探偵という仕事に出会う
専門学校を卒業した後は、1年くらい飲食店などで仕事をして過ごしました。
でも、やっぱり「人の役に立つような仕事がしたいな…」と、思うようになって。それで、ハローワークに行ったんです。
私は「人とは違う仕事がしたい」「退屈な仕事はしたくない」という思いもあったので、そんな仕事が見つかればいいな…と、思って。
そこで、職員さんから紹介された求人を見て、私は探偵という仕事を知りました。

警察にはなれなかったけど、探偵だったら誰かの役に立てるかもしれない。
探偵の仕事だったら、きっと退屈しない…!
そう思い、私は探偵になることを決心しました。
ハローワークに出ていた探偵の求人は、「人探しサービス」の募集だったんですが、これは残念ながら締め切ってしまっていました。
なので、今度は自分で調べて探偵社に応募し、今では日本最大級になった大手探偵社に入社しました。

こうして私は、探偵としての道を歩み始めることになりました。
新米探偵の頃の話
探偵として働き始めた頃の苦労や葛藤をお聞きしました。

探偵の仕事は向いていた
探偵社で仕事を始めて、私は聞き込みを中心とした調査を担当しました。
みなさんは、探偵というと尾行をしたり張り込みをしたり…というのを想像しますよね。
大多数の探偵さんはその通りです。
でも、人探しや結婚調査では聞き込み。人とお話をして、情報を集めるというのがメインの仕事です。
対象者が昔住んでいた場所で聞き込みをしたり、人探しなら目撃情報があった場所の近くに住んでいる人に話を聞いたり…。
ただ、私は昔から接客業をやっていたということもあり、仕事を初めてすぐ仕事に慣れることが出来たと思います。
自分を偽ることへの葛藤

探偵を始めた頃は「嘘をつかなければいけないこと」に悩みましたね。
探偵は、「自分は探偵だ」と身分を明かしてしまうと警戒されてお話を聞けなくなってしまう場合があります。
なので、調査対象者の友人や同僚などと身分を偽って仕事をすることがあります。
そこで、仕事で嘘をつくのが当たり前になってしまい、目の前にいる人を騙しているということに心が痛みましたね。もちろん、今も慣れませんが。
それに、嘘をついているときは、目の前にいる人と絶対に親しくなることはできないんですよね。どこまで行っても、自分という存在は嘘なので。

探偵は、ある種そういった「孤独」のつきまとう仕事かもしれません。
それと、やっぱり人と話す仕事で、毎回ぶっつけ本番なんですよ。ある程度のノウハウはあっても、マニュアルは作れないのが探偵の仕事です。
聞き込みで訪問した時、どんな方が出てくるか、ちゃんと話を聞き出せるか、いつもヒヤヒヤしています。
探偵の仕事は、センスと頭の回転の速さが求められそうですね…!

仕事を続けて感じたツライところ

あれからずっと探偵として働いていますが、慣れたら慣れたで大変なことはあります。
新米の頃は、ただ上司に言われた所へ行って、上司に言われたことをやればよかったですけど、経験を積むと案件だけを振られて、全て自分で考えて行動する必要があります。
調査する場所や、どのくらいその場所に時間を割くかなども自分で決めます。
だから、報告書を提出する直前になって、「ここ行っとかないとまずいでしょ!」となって、バタバタすることもありましたね。笑

それから、報告書を作るのも私にとっては難しかったですね笑
文章の作り方がとかもそうなんですが、人探し調査は「聞き込み」の結果をお伝えすることがほとんどなので、語尾が曖昧になりがちなんですよね。
結局、聞き込みで聞いたことは人づての情報でしかないので、「この場所にいたと思われる」「この場所にいると思われる」など…言い切ることができません。
でも、依頼者さんはとても不安を抱えている状態なので、できるだけはっきりとした情報が欲しいんですよね。
でも、絶対に嘘はつけません。だから、依頼者さんに納得してもらえるような報告書を作るのには、いつも苦労しています。

あと、やっぱり聞き込み自体も辛くはありますね
先ほども、「どんな方が出てくるかわからない」という話をしましたが、聞き込みをする方によっては、すごく当たりの強い対応をされることをされることがあったりします。怒鳴られたりすることもありますし…。
過去には、盗撮されたこともありました笑

だから、聞き込みという仕事自体は好きではないですね笑
あと、私虫が嫌いなんですよね笑
なので、地方の山の中のお家とかを撮影しに行く任務などがあると、いつも1人で悲鳴を上げながらやっています
探偵としてのやりがい
でも、やっぱり依頼者さんにとって有益なことを聞けた時は嬉しいですし、達成感はあります。ちょっとでも、依頼者さんの役に立てたと感じた時には、探偵としてのやりがいを感じます。

探偵って、結構やめてく人は多いんですよ。
やっぱり、努力というより適正が重要な仕事ですし、張り込みとかをやっていると「この時間、自分の人生を浪費してるな」みたいなことを思ってしまいます。すぐに結果が出る仕事ではありませんから。
でも、そういう一個一個の仕事の積み重ねが依頼者さんの問題を解決するために大切なことなんです。
それに、毎日すごく刺激的ですね!普通の仕事をしていたら、経験できないようなことを毎日経験しています。
探偵になるとき、「退屈しない仕事がしたい…」と思っていましたが、あの日の思いは今満たされていますよ笑
探偵業界の今と今後について

探偵業界は今、コロナウイルスの影響で大きな転換点にあると思っています。
今の探偵業界、特に大手は、広告費に莫大な予算を割いて大々的に広告を出し、仕事をとってくるやる方が主流です。ただ、そういったやり方はもうできなくなるのかなと思っています。
それはやはり、コロナの影響で経済が萎縮してしまっているから。探偵の調査費用は安くはありませんから、収入が減ってしまうと、依頼できない…という人は少なくないです。
私がいた大手探偵社でも、依頼が入ってもキャンセルが増えたり、依頼数大幅に減少したり…。探偵としては、とても厳しい状態でした。
ただ、そうなると大手探偵社は縮小せざるを得なくなり、結果的に中小規模の探偵社さんや、個人の探偵さんに回ってくる仕事も増えそうだ、と予想しています。
InstagramやTwitter、ネット検索によって、今では誰でも欲しい情報にアクセスできるようになりました。
その影響もあり、適切な発信をしている探偵さんの元に依頼者さんが集まるようになるのかなと思います。

ただ、探偵は玉石混合です。
実力のある探偵さんは多いですが、そうでない探偵さんも少なくありません。そして、それを見抜くのは簡単ではありません…。
広告に「業界最大手」「業界NO.1」と書かれていても、実際にそうとは限りませんし、また、インターネットで活発に発信している=良い探偵さんとは限りません。
フォロワー数と調査能力は全く関係がありませんからね…。

探偵業界は、これから変わっていくとは思いますが、まだまだ問題も多い業界であることは間違いありません。

でも私は、そうした中でも探偵として依頼者さんのために尽くしていきたいと思っています。
誰かの役に立ちたい。だから私は探偵なんです

私は、常に依頼者さんの役に立つ探偵でいたいと思っています。
探偵は、悩んで悩んで、どうしようもなくてすがる先です。
調査にかかる金額も安くありませんから、「これだけ払ってもらっているから、相応のものを返したい。」という思いもあります。独立してから、その気持ちは特に強くなっています。
「自分は、依頼者さんが抱える問題に悩んで…困って…最後に頼るライフライン」私はそう考えています。このことだけは忘れず、私はどんな時も依頼者さんのために仕事をしたいと思っています。
だから、私は探偵なんです。