
みなさんこんにちは。ホムズトーク編集部です!
みなさんのイメージする探偵といえばコナンくんやシャーロックホームズのように、「日常に起きた殺人事件を解決するすごい奴。」的なノリの人が多いですよね。
しかし、今日本中で活躍している探偵さんの仕事はちょっと違います。仕事のほとんどは浮気調査・人探しで、殺人のような重大事件に関与することは基本的にありません。
しかし、日本に初めて登場した私立探偵・岩井三郎さん一味違います。彼は、アニメやドラマの世界のように歴史を揺るがすような大事件を解決に導いてきました。今回は、そんな日本初の私立探偵・岩井三郎さんに迫ります。
岩井三郎とは?
時は明治。岩井三郎はもともと明治政府にて司法主任務める警察官でした。司法主任とは、現在の警部補に相当する階級で、主に犯罪捜査を担当役職です。岩井は司法主任として、1894年に起きた日本と清がなぜか戦争した「日清戦争」での清側スパイの摘発などで活躍した後、30歳の時警察を退職。その後、日本初の私立探偵となりました。
そして、現在も東京・中央区に存在する「株式会社ミリオン資料サービス」の前身となる「石井探偵事務所」を設立しています。
日本史上初の探偵としての地位を確立
しかし設立当初は、探偵という仕事は世間に全く理解されず、依頼はほとんど来なかったと言います。
しかし、その後コツコツと依頼をこなして探偵として活動を続け、岩井探偵事務所に舞い込む依頼を解決し少しづつ名をあげていきました。
その後シーメンス事件のような難事件をも解決し、名探偵としての地位を確立。日本の政財界にまでその名を轟かせました。
明智小五郎のモデルと言われている

出典:東映チャンネル
また、この石井探偵事務所にはあの江戸川乱歩が探偵として所属していたことでも有名なのですが、推理小説マニアの間では、江戸川乱歩の代表作「明智小五郎シリーズ」の主人公・明智小五郎のモデルは岩井三郎なのではないかと言われています。

顔立ちや調査への泥臭い姿勢が岩井三郎によく似ていると言われていたようです
また、明智小五郎の助手を勤める小林君は、江戸川乱歩自身だったのではないか?とも言われており、岩井探偵事務所での経験が江戸川乱歩作品に大きな影響を与えたことが伺えます。
岩井三郎の事件簿
では、そんな岩井三郎が探偵として解決してきた有名事件を見ていきましょう。
シーメンス事件
シーメンス事件とは、明治時代、日本海軍がシーメンスというドイツの会社から賄賂を受け取って、兵器を不正にシーメンスから購入した政治家による汚職事件です。
この事件をきっかけに、海軍と特定企業の癒着が明るみに出されました。

現代でも、政府が仕事を一般企業に委託する際、政府のお偉いさんが特定の企業から賄賂を受け取って、そこに仕事を流したりしますよね。当時からそうしたことが行われていたわけです。
この事件の結果、当時の海軍大将・山本権兵衛を総理大臣とする第一次山本内閣は総辞職に追い込まれるなど、シーメンス事件は文字通り日本を揺るがす大事件でした。

そして、事件を調査し海軍の腐敗を明るみに出したのが岩井三郎でした。
岩井は、政府からの依頼を受けてこの贈収賄事件を調査し、海軍と特定企業の癒着の証拠を集め見事政界の闇を明るみに出しました。

この功績から、岩井探偵社の名は日本中に知れ渡ることとなります。
花王歯磨密造事件

この事件については、資料が全くと言っていいほど残っていません。
資料が抹消されたのか、それとも大した事件ではなかったのか…岩井三郎が解決した代表的な事件に数えられていますが、現段階でこの事件は謎に包まれています。
古河炭鉱詐欺事件

この事件についても、詳細な資料はほとんど残っていませんでした。
古河炭鉱という名前も様々なところで使われており、福岡県のある炭鉱で起きた炭鉱詐欺事件の解決に岩井が関与した…程度のことしかわかりません。
ただし、この辺りは古河財閥という現みずほ銀行の設立に関与した財団が所有していた炭鉱がたくさんありました。そのため、この事件には古河財閥が関係している可能性は高いです。
伊達順之助による敵対学生射殺事件
伊達淳之介とは
伊達順之助は、満州独立運動に参加した大陸浪人で、馬賊です。
大陸浪人とは、明治からWWⅡ終了まで海外で政治活動を行っていた民間人なんですが、明治期の政策によって特権を失い、不満を持った華族も多かったと言います。

没落不良貴族ってやつですね
また、馬賊とは明治期満州を中心に馬に乗って強盗を行った盗賊団のこと。元は満州に移り住んだ日本人による自警団のようなものでしたが、だんだん力を付けるごとに強盗団のようになっていきました。
伊達順之助は、このようになかなかのろくでなしですが、そのご先祖はあの戦国時代の武将・伊達政宗でした。
伊達順之助は、あの独眼竜・伊達政宗の直系の子孫です。
また、この生まれから順之助は華族として数えられる一族の人間だったわけです。
ちなみに、伊達一族の末裔として有名なのがサンドウイッチマンの伊達みきおさんです。
慶應義塾中等部時代、不良学生を射殺する
伊達順之助は幼い頃から素行が悪くて有名で、不良として付近の学生と縄張り争いをして揉めていました。喧嘩に勝てるようにと、いつも出刃包丁を持ち歩いていたというのだから筋金入りです。

まだ戦国時代やっちゃってる?
そんなミニ戦国時代をやっていた伊達順之助ですが、彼が18歳の頃とうとう敵対する不良学生を射殺する事件を起こしました。
逮捕された順之助は、1909年10月15日の東京地方裁判所判決で懲役12年、1910年6月の控訴審判決では懲役6年を宣告されました。
岩井三郎の活躍によって正当防衛が立証される

しかし、そこで活躍したのが岩井三郎でした。
岩井は、伊達家の弁護士の依頼により射殺された不良生徒が淳之介によって殺されるまでの素行調査や、順之助と揉めた時の状況などを徹底的に調査。
彼の調査報告書によって、上告審は順之助側に有利に進み、伊達順之助による不良生徒殺害事件は、正当防衛であったことが立証されました。
岩井三郎が与えた影響
このように、岩井三郎は日本初の探偵として活躍し、様々な歴史的な大事件解決に導き、明治期の日本に名探偵として名を馳せました。
では、そんな岩井が与えた影響を見て行きましょう。
探偵という職業を確立した
岩井三郎の功績として真っ先にあげるべきは、やはり探偵の始祖としての探偵業界への貢献でしょう。
日本初の探偵として明治期に大活躍し、探偵という職業を日本に根付かせた岩井三郎は、現代日本における全ての探偵の父と呼べる存在かもしれません。

岩井三郎がいなければ、今日探偵という仕事はなかったかもしれません
日本の探偵カルチャーに大きな影響を与えた

また、ここからはホムズトークの考察になりますが、岩井三郎は現代日本における探偵カルチャーの始祖でもあるのかもしれません。
探偵と聞いて、現代の多くの人が思い浮かべるのはシャーロックホームズや名探偵コナンや明智小五郎でしょう。
こうした、日本で有名な「探偵物語」には必ずと言っていいほど江戸川乱歩の影響があります。そして、この江戸川乱歩は岩井三郎探偵事務所で探偵として勤務していた過去があります。
江戸川乱歩から江戸川コナンへ。受け継がれた名探偵のDNA
特に、名探偵コナンシリーズへの影響は計り知れません。
名探偵コナンの作者である青山剛昌さんは、幼少の頃から推理ものが大好きで、シャーロック・ホームズや江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを好んで読んでいたことで知られています。
そんな青山さんが生み出した「名探偵コナン」シリーズは、日本の探偵カルチャーを代表する作品です。
そして、名探偵コナンシリーズは、毎年と言っていいほど映画が作られ、その度に何十億円もの興行収入を叩き出すもはや探偵という垣根も超えた、日本を代表するポップカルチャーとなっています。

周りでも、コナンくんを知らない人はいません。
もし、岩井三郎がいなかったら…。もしかしたらコナンくんはこの世に誕生していなかったかもしれません。
探偵の始祖・岩井三郎
以上が日本初の探偵・岩井三郎についてでした。
岩井三郎は、日本の探偵業界にとってだけでなく、間接的にではありますが、僕たち誰もが知る探偵カルチャーにも非常に重要な役割を果たしました。
この記事を通して、少しでも探偵に興味を持ってくれたら嬉しく思います。
また、現代の探偵は、岩井のように華々しく難事件を解決することは無いかもしれませんが、多くの人が抱える人生のトラブルを、人に寄り添い解決しています。
もし、自分ではどうしても解決できない問題があれば、ぜひ探偵にご相談ください!